- 独立するために必要な知識や経験を解説!
- 監査経験だけで独立した失敗例を紹介!
- 税務経験を積まずに独立したら失敗することがわかる!
監査法人を辞めて独立したいなぁ!
せっかく会計士という独立できる資格を取ったんだから自分の事務所を立ち上げたい!
こう考えている人は多いでしょう。
特に終了考査に合格した頃。監査にも慣れて「会計士として独立したい」という気持ちが大きくなってくるタイミングです。
「じゃあ独立しちゃおっか!」
監査法人の経験だけで独立すると9割は失敗しちゃうよ…。
監査で得た知識と経験だけで見切り発車で独立すると9割は失敗します。
独立した会計士の方のために、どのようなステップを踏むのが良いのか徹底的に解説していきます。
この記事を読めば独立するためにやっておくべきことがわかるようになります。逆にやるべきことをやらずに独立しちゃうと後悔する可能性が高いです。
会計士の独立に必要となる知識・スキル4つ
何も準備しないでいきなり監査法人を辞めて独立するのはダメです。
何事も準備が大切。まずはどんな準備をしておく必要があるのか正確に知っておきましょう。
なので、監査法人での評価が良かったからといって独立して成功するとは限らないよ。
独立に必要となる知識やスキルの中で特に大事と考えられるものを4つピックアップしました。
- 営業スキル
- 税務知識・税務申告の経験
- 優秀な税理士のコネ
- 英語力
それぞれ説明していきます。
独立に必要なスキル1|営業スキル:仕事は自分で取ってくる
監査法人時代は言ってしまえば雇われ人。国家資格を持っていたとしてもサラリーマンと一緒です。
パートナーやシニアマネージャーにならない限り仕事を自分でとってこなくても与えられる立場でした。
しかし独立した場合には、自分で仕事を取ってくる必要があります。勝手に仕事が集まってくる環境ではありません。
食べていくためには自分で売り込まないといけないわけです。
- 自分の強みを明確にして
- お客さんのニーズを汲み取り
- 自分を認識してもらう
こうして初めて仕事がもらえるのです。
独立したら何を強みにどんなサービスを提供していけば良いのか。言い換えればどうやって差別化していくかを考える必要があります。
ネット集客を行うなど営業方法自体を差別化する方法もあります。ここで言ってる営業スキルとは、必ずしも口のうまさ、プレゼンスキルだけではありません。
独立に必要なスキル2|税務知識・税務申告経験:税務のニーズが大きい
会計士が独立した場合に引き続き監査で食べていくのは難しいです。
個人で監査をやるのはほぼムリです。組織的な監査法人と契約しているお客さんを引っ張ってくるのは至難のワザ。
中小監査法人の委託先として仕事をもらえることはありますが、非常勤で働くのと何ら変わりはしないので独立した意味は無いでしょう。
一般的に会計士が独立した場合の業務は以下の通りです。
- 会計・税務に関するアドバイス
- IPOやM&A、資金調達、事業再生等に関わるコンサルティング
- 税務業務
- 記帳代行
- 監査法人の監査補助
- ベンチャー企業・スタートアップ企業の会計税務業務
- 経営者の資産管理会社の運営サポート
- 個人のタックスプランニングや税務申告のサポート・代理
この中でメインとなるのは「税務」です。
税務相談のニーズを持つお客さんは法人・個人を含めてかなりの数になるので比較的仕事を取りやすいです。
会計事務所を立ち上げた時の中心業務は税務になることが多く、また中小企業の多くが税金に悩みを抱えているので、税務知識を持っていることは最低限必要です。
独立に必要なスキル3|優秀な税理士とのコネ:他人の力も借りながら
独立すると「一人の力が試される…」と中二病が発症してしまいがちですが、実際は一人で全部の案件を捌いていくのはムリです。
自分の経験がない分野で相談が来た時には、できる人に振ったり、一緒にやったりしないと燃えます。
この人に頼まなきゃ良かった。できないなら最初からそう言えよ!
このように思われたくはないですよね。
最初から一人で何でもできるとは思わず、人の力を借りながらできることを増やしていくのが現実的な道です。
そのため独立前に頼りになる経験豊富な税理士とつながっておくことがかなり重要。
独立に必要なスキル4|英語力:あれば差別化に繋がる
必須ではないものの仕事の幅が広がるのが英語力。
- 税務相談
- 記帳代行
- 会計アドバイス
会計事務所はどこも同じようなサービスを提供していますよね。各会計事務所のウェブサイトを見ても、何が他の事務所と違うのかわかりません。
世の中に会計事務所は腐る程ありますから、すでに後発組の我々が同じようなサービスに参入しても勝ち目は少ないですし、面白くもありません。
例えばだけど、これだけでかなり差別化になるはずだよ!
- 日系企業の海外進出サポート
- 日本に参入したい海外会社のサポート
英語ができない会計士も多いので、SNSも運用しながらコンテンツを発信していくことで、この分野の専門家として認知されることも可能かと。
必ずしも差別化できる方法は英語だけではありませんので、あなたの強みを活かせる差別化方法を考えてみましょう。
会計士が独立する理想のステップ
リスクを受け入れるけど…やっぱり失敗したくない。そう思うのは当たり前です。
失敗する可能性を少しでも減らすために独立するときの理想のステップを紹介します。
でも少しでも理想に近づけてもらえると独立してからの楽さが全然違ってくるんだ。
STEP1|監査法人で働きながら視野・人脈を広げる
独立しようと思っている方は監査法人で働いている人が多いと思います。
監査をする際にはただ漫然と突合を繰り返したり与えられた仕事をこなすのみでは3流会計士。
独立を考えているのであれば、もう少し違った目線で仕事をしていきましょう。
- どうして会社はこのような取引をするのか?経営判断の背景を考える
- 自分がコンサルしたらどうやって利益を上げるかを常に考える
- 経理プロセスに改善の余地がないか探る。
また、監査法人にいる間に人脈も広げていきましょう。
- 異業種交流会に参加する
- 補習所同期と仲良くする
- 独立した先輩と連絡を取り合う
- 独立した人に話を聞きに行く
意識高い系の行動に思えて「なんか嫌だなぁ」と思う方もいるかもしれませんが、頼れる人が何人いるか?で独立した後の難易度が変わってきます。
独立してから人脈を作るのは時間がもったいないです。監査法人にいる間に積極的に人と交流していきましょう。
STEP2|会計事務所や税理士事務所で税務を勉強する
独立したら「税務」のニーズが大きいので、どうしても税務にも手を広げなければいけません。
一方で監査法人で監査をしているだけでは税務実務の勉強はできません。
そのため、独立前に会計事務所や税理士事務所を一つ噛ませるのが理想です。
- 税務知識と税務実務を身につけられる
- コネを作ることができる
- 中小規模の事務所の運営ノウハウがわかる
会計事務所や税理士事務所で修行するのには、このようなメリットがあります。
- 中小規模であること
- 個人や中小企業のお客さんが多いこと
会計事務所や税理士事務所であればどこでも良いわけではありません。大手では独立に必要なスキルは全く身につきません。
- 大手のブランド力のみで仕事が取れるので営業スキルが不要だから
- 任される仕事の範囲が限定的で知識が偏ってしまうため
また、個人や中小企業のお客さんが多い事務所を選びましょう。
大手上場会社と個人や中小企業では悩むポイントが全然違います。個人や中小企業では、
- どうやって確定申告書を書くの?
- 経費ってどこまで落とせるの?
- 財務諸表の作り方がわからない
というような大企業では絶対に聞かれないようなことが仕事になります。
個人や中小企業を相手にできる事務所のお客さんの方が、独立した後のお客さんに近いです。
STEP3|独立準備資金を貯める
独立してすぐに稼げるようになる人はスーパーマンです。ほとんどの人は血反吐を吐きながら営業をして徐々にお金が稼げるようになっていきます。
そのため当面の生活費は貯めた上で独立することをおすすめします。金銭的に追い詰められた状態でお客さんも付かないこの状態は一番避けたいところ。
事務所を構えるかどうか、また家族がいるかどうかにもよりますが、以下の金額が目安になります。
- 事務所を構えるための初期費用:200万円〜300万円
- 当面の生活費:700万円〜800万円
- 合計:約1,000万円
STEP4|自分のブランディング戦略を練り独立する
人脈、会計税務知識、資金がある程度準備できたら独立する良いタイミングです。
ただ独立する前にもう一つやってほしいのは「ブランディング戦略」。つまりどのように自分を売っていくのかをよく練ること。
- IPOやスタートアップに強い
- 副業関係ならお任せ
- 相続税専門
など「〇〇の分野ならあなた」という強みを作り出しましょう。今は情報発信ができる時代。ブログ、Twitter、インスタグラムなどのSNSもフル活用してブランディングしていくと良いです。
そしてそれと同じくらい大事なのが仕事の受注経路をイメージしておくこと。
独立した時にほぼ全員が直面するのが「どうやって仕事を取ってくるか」という問題。独立する前にある程度仕事受注の道筋を付けておきましょう。
- webサイトを作って、検索してきた人から仕事を受注
- SNSで情報を発信し、興味を持った人から仕事を受注
- 弁護士や社労士など他の士業から仕事を紹介してもらう
- 会計ソフト会社からお客さんを紹介してもらう
- 過去の会社で担当していたお客さんを引っ張ってくる
- 飛び込みで営業をかけて仕事を取る
今まで築いたコネクションがあると仕事をもらいやすくなります。そのためにもSTEP1で人脈を広げておくことが大切なのです。
次に監査経験だけで独立に失敗しやすい理由を失敗例とともに説明していくね!
監査経験だけでは独立に失敗する理由と失敗例
監査経験で勢いで独立してしまう!というのももちろんありです。それでうまくいった人もいます。
しかし、多くの人は監査経験だけだとうまくいかないことの方が多いです。勢いややる気だけではどうにもならないこともあります。
どうして監査経験だけで独立すると失敗する可能性が高いのか、その理由を説明していきますね。
- 監査業務は個人じゃできない
- 収益を安定させるには「税務」が不可欠
理由1|監査業務は個人じゃできない
先ほども説明しましたが、監査業務で仕事を取ってくるのは至難の技です。
考えてみればわかるように、多くの中小企業は監査自体いりませんし、監査が必要な大きな会社はしっかりした実績のある監査法人を起用します。
となると、個人が独立した事務所で監査をお願いされることはありません。
今まで監査法人でやってきた監査という業務では食べていけないのです。
理由2|収益を安定させるには「税務」が不可欠
ではどうすれば、事務所が軌道にのるかというと「税務」を含めるのです。先ほども説明しましたが大事なことなのでもう一度説明しておきます。
税務という観点を含めれば一気にターゲットが広がります。中小企業だけでなく個人商店や個人事業主全ての人が潜在的なお客さんになるわけです。
もちろん他に強みがあれば必ずしも税務をやらないといけないわけではありません。でも税務ができた方が間違いなくサービスの幅が広がります。
監査法人→独立の失敗モデル
監査法人の仕事に嫌気が指して4年で独立
ある男性会計士の話です。大学を卒業後1年間の勉強期間を経て無事会計士試験に合格。4大監査法人の一つの監査法人に入所し監査業務をスタートしました。最初は経営者と話したり、決裁書など普通では知り得ない情報に触れる機会があることに魅力を感じていました。しかし、3年間経ち現場責任者も経験すると次第に「監査ってつまらないな」と思うようになりました。監査法人に入所して4年、27歳で思い切って独立することにしたのです。
営業スキルもコネもなく苦労した
独立して愕然としたのが、どうやって仕事を取ってくれば良いかわからないということ。同時に監査法人時代は与えられた仕事だけこなしていれば良かったんだということを痛感しました。とはいえ、食べていくためには仕事を取ってこなければならないので、ところ構わず地元の企業や商店に営業をかけていきました。やったことがない業務でもやったことがある、専門家のふりをして仕事を取ってこざるを得なかったのです。
税務調査で指摘事項がたくさん、已む無く廃業
一番多かったのが、やはり税務相談。税金のことはわからないので、よろしくやってくれという依頼が多かったのです。よくわからないままに申告書を作って申告代行をしていました。ある日彼の顧客のところに税務調査が入ったのです。そこで出てきたのは指摘事項の山。顧客には追徴課税が課されました。彼の顧客は激怒し地元で彼の悪評が広がり他の顧客との契約も打ち切られてしまいました。地元で会計事務所としての仕事ができなくなり、彼は已む無く廃業することになりました。
会計士の独立Q&A
ここからは会計士が独立するときの疑問や不安についてQ&A形式で解説していきます。
誰もが独立するときは不安に思うもの。先輩たちが不安に思ったことや先に知っておいた方が良いことをまとめてみました。
会計士が独立すると年収はどのくらい?
独立した会計士の多くが1,000万円から2,000万円程度稼いでいます。
中には3,000万円以上稼いでいる人もいますので、夢が広がりますね。最初からうまく行くことは少ないので、中堅監査法人などで繁忙期の非常勤勤務と兼務して小銭を稼ぎながら自分の事務所を拡大していくパターンが多いです。
会計士が独立開業するベストな年齢・タイミングは?
若ければ若いほど良いです。
独立する年齢やタイミングに正解はありません。一般的には以下のようなタイミングで独立される人が多いです。
- 修了考査に合格して会計士登録したタイミング
- 結婚・出産など大きなライフイベントがあった時
何れにしても、勢いで独立するのではなく、しっかりとした計画に基づいた準備ができた段階で独立するのが良いでしょう。行き当たりばったりでは失敗する可能性が高くなります。
会計士が独立するメリット・デメリットは?
メリットは色々な意味で自由、デメリットは責任が重くなること。
- メリット1:収入が青天井
- メリット2:自分の都合に合わせた働き方ができる
- メリット3:事務所が拡大するにつれてやりたいことが実現できる
- デメリット1:収入が保証されていない
- デメリット2:最後は全て自分の責任になる
- デメリット3:組織力を活かした大きな仕事はできないことが多い
会計士で独立してコンサルはできますか?
コンサルはできます。
会計士は会計のプロですから、色々な場面で知識や経験を活かせる場面があります。例えばスタートアップの企業を支援したり、資金繰りのコンサルをしている会計士もいます。
地方にUターンして独立はできる?
地方に戻って独立する人も多いです。
地方は独自のネットワーク網が発達していることが多いので、新規でお客さんを取るのは難しいという側面があるのですが、新しいことを取り入れれば一気に拡大できるチャンスもあります。
地方と東京などではお客さんのニーズも違いますから、しっかりとリサーチをした上で営業をかけていくことが必要になります。
会計士として独立した場合、健康保険はどうなるの?
選択肢としては「任意継続」と「国民健康保険」の2つがあります。
任意継続とは監査法人時代の健康保険を2年間に限り継続できる制度です。とりあえずは2年間は任意継続した後に国民健康保険に切り替えるのが無難です。
厳密にどっちが有利か不利かを計算してみてどちらにするか決めるのが良いのですが、健康保険組合の窓口に行けば簡単に教えてくれます。
独立する手続きがわかるおすすめの本・書籍を教えてください。
残念ながら独立におすすめの本はありません。
しかし、freeeが会計士や税理士の独立をサポートしてくれるサービスを提供していますので、気になる人は一度話を聞いてみると良いでしょう。また、セミナーをやっていることもあります。
参考 税理士向け独立開業サポートfreee公式サイト参考になる会計士独立ブログを教えてください。
ブログを読むより実際に独立した人の声を聞きましょう。
あなたが監査法人に勤めているのであれば、先輩の一人や二人は独立開業しているのではないでしょうか?信頼できる先輩の生の声を聞いた方が実際のところがイメージしやすいです。
積極的にコンタクトを取って話を聞くことで、コネ作りにも役立ちます。
まとめ:独立したいなら計画的に準備しよう
独立するなら、いきなり独立するのではなく計画的に準備を進めましょう。
成功する独立ステップをもう一度おさらいしておきます。
特に税務の知識や経験を身につけることで成功確率がアップします。
まずは会計事務所、税理士法人で働くというワンクッションがあるかないかで、独立した後の仕事の取りやすさ、収益の安定度合いが全然違います。
以下の記事で会計士におすすめの転職エージェントを紹介していますので、会計事務所に興味があるという人は相談してみてはいかがでしょうか。